日中の学術連携を深め、日本語教育の新たな可能性を拓く

「早稲田式日本語教育実験基地」に関する戦略的連携協定の締結

1. 本学会の主導による日中の戦略的連携

2026年10月18日、中国・上海で「第5回国際留学教育サミット」ならびに「国際学習・共創シンポジウム」が開催された。日本留学教育学会(以下、本学会)の主導により、早稲田大学中国語教育総合研究所と上海紡工大JHS日本教育センターの戦略的連携に関する協定締結式および「早稲田式日本語教育実験基地」の銘板授与式が行われた。本学会は大会の開催に協力し、鄧偉理事長が出席して挨拶を行った。

今回の連携は、日中の優れた教育・研究資源を結び付け、学術交流と人材育成を促進する本学会の取り組みの一環である。同研究所と中国の日本語教育機関の連携を通じて、大学における研究と教育現場との接点を広げ、日本語教育研究、指導法の開発および教員の専門性向上に向けた交流を促進する。

2. 学術研究と教育実践を結ぶ拠点づくり

「早稲田式日本語教育実験基地」は、こうした連携を具体化するための拠点である。上海紡工大JHS日本教育センターの教育実践を基盤として、学習者の個人差、言語運用能力、カリキュラム設計および学習評価などの課題について交流を深め、研究成果を学習支援に生かすとともに、教育現場の課題を新たな研究につなげることが期待される。本学会は、研究と教育実践の連携を通じ、教育の質の向上と学生の成長に資する連携を目指す。

3. 教育と人材育成をめぐる学術交流

大会では、国際教育の発展と人材育成をめぐり、さまざまな分野から学術報告が行われた。

早稲田大学の森山卓郎教授は、語用論の観点から実際の場面における日本語コミュニケーション能力を論じ、文脈の理解、発話意図の把握、協働的な姿勢を育む重要性を指摘した。

大阪大学の中俣尚己教授は、文法コロケーションハンドブックの共同作成を例に、コーパスデータを活用した教材の改善と、研究成果を授業に生かす方法を紹介した。

立命館大学客員研究員の岡田直樹氏は、共同カリキュラムの開発、学習支援および日中の大学間連携におけるAIの活用可能性について報告した。

東京外国語大学の岡田昭人教授は、「言語と学術活動への参加」「異文化間の対話・交渉と省察」「共創」の三層からなる国際学習の枠組みを提示した。

教育学博士の王智新氏は、日本語学校の質保証と多文化共生を主題に、習熟度に応じた指導、教員の専門性向上、学生支援体制の充実について論じた。

早稲田大学中国語教育総合研究所所長の楊達教授は、言語習得の仕組みを踏まえ、オンライン学習・評価やAIを活用した会話練習など、教育における技術活用について報告した。

京都美術工芸大学の馬樹茂講師は、美的感性の涵養、分野横断的な学び、国際的視野の拡大という観点から、芸術教育と人材育成のあり方を論じた。

これらの報告は、実際の言語使用に基づく授業改善、技術と研究による学習支援、異文化交流を通じた理解力・協働力・創造力の育成という観点から、教育の質と人材育成をめぐる議論を深めるものであった。同拠点における今後の教育実践や研究交流にとっても、有益な示唆が得られた。

4. 今後の展望と本学会の役割

日中の学術交流を促進し、教育の発展と次世代の成長に寄与することは、本学会の重要な使命である。今回の連携を通じて、大学、研究者および教育機関の対話を深め、学術交流の成果を教育研究と人材育成につなげていく。

今後も本学会は、日本語教育、教育方法の改善、人材育成をめぐる学術会議、専門的な研究会、教員交流、共同研究などを積極的に推進し、日中の大学・教育機関の連携機会の拡充に努める。また、同拠点の整備・発展を支援するとともに、交流の成果を教育実践に還元し、言語運用能力、専門性および国際的視野を備えた人材の育成に貢献していく。